東京高等裁判所 平成10年(ネ)25号 判決 1998年6月29日
二五号事件控訴人(被告)
山下八重子
外一名
右両名訴訟代理人弁護士
橋場隆志
二七五号事件控訴人(被告)
高橋佳久
右訴訟代理人弁護士
荒井鐘司
二五号事件・二七五号事件被控訴人(原告)
高橋和子
外一名
右両名訴訟代理人弁護士
林浩盛
主文
一 原判決中控訴人ら敗訴の部分を次のとおり変更する。
二 控訴人高橋佳久は、被控訴人らに対し、原判決別紙遺産目録一(三七)記載の建物について、被控訴人高橋和子が一〇〇〇〇分の二四〇三、被控訴人伊藤安里子が一〇〇〇〇分の二四〇九の各所有権持分を有することを確認する。
三 控訴人山下八重子は、
1 被控訴人らに対し、同目録一(三五)記載の土地の所有権持分について、被控訴人高橋和子の所有権持分を一〇〇〇〇分の三〇九、被控訴人伊藤安里子の所有権持分を一〇〇〇〇分の三一〇とする平成五年七月二九日遺留分減殺を原因とする各所有権持分移転登記手続をせよ。
2 被控訴人らに対し、同目録一(四〇)記載の建物について、被控訴人高橋和子の所有権持分を一〇〇〇〇分の二四〇三、被控訴人伊藤安里子の所有権持分を一〇〇〇〇分の二四〇九とする平成五年七月二九日遺留分減殺を原因とする各所有権移転登記手続をせよ。
四 控訴人高橋幸男は、
1 被控訴人らに対し、同目録一(一)ないし(二八)記載の各土地について、被控訴人高橋和子が一〇〇〇〇分の二四〇三、被控訴人伊藤安里子が一〇〇〇〇分の二四〇九の各所有権持分を有することを確認する。
2 被控訴人らに対し、同目録一(六)ないし(三〇)、(三二)、(三三)、(三六)、(三八)、(三九)、(四一)、(四二)記載の各土地ないし建物について、被控訴人高橋和子の所有権持分を一〇〇〇〇分の二四〇三、被控訴人伊藤安里子の所有権持分一〇〇〇〇分の二四〇九とする平成五年七月二六日遺留分減殺を原因とする各所有権移転登記手続をせよ。
3 被控訴人らに対し、同目録一(三四)記載の土地の所有権持分について、被控訴人高橋和子の所有権持分を一〇〇〇〇分の九九、被控訴人伊藤安里子の所有権持分を一〇〇〇〇分の一〇〇とする平成五年七月二六日遺留分減殺を原因とする各所有権持分移転登記手続をせよ。
4 被控訴人高橋和子に対し、金一一九九万九六六八円、被控訴人伊藤安里子に対し、金一二〇二万九六三〇円を支払え。
5 被控訴人らに対し、同目録二(二)ないし(四)記載の各預金債権、同目録四(一)ないし(六)記載の各出資金、同目録五(一)、(二)記載の各株式について、被控訴人高橋和子が一〇〇〇〇分の二四〇三、被控訴人伊藤安里子が一〇〇〇〇分の二四〇九の各持分権を有することを確認する。
6 被控訴人伊藤安里子に対し、同被控訴人が同目録六記載の不当利得債権について一〇〇〇〇分の二四〇九の持分権を有することを確認する。
五 被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一 控訴の趣旨
一 控訴人山下八重子、同高橋幸男(二五号事件)
1 原判決主文第二、第三項を次のとおり変更する。
2 控訴人山下八重子は、
(一) 被控訴人らに対し、原判決別紙遺産目録一(三五)記載の土地の所有権持分について、被控訴人高橋和子の所有権持分を一〇〇〇〇分の三〇七、被控訴人伊藤安里子の所有権持分を一〇〇〇〇分の三〇一とする平成五年七月二九日遺留分減殺を原因とする各所有権持分移転登記手続をせよ。
(二) 被控訴人らに対し、同目録一(四〇)記載の建物について、被控訴人高橋和子の所有権持分を一〇〇〇〇分の二三八三、被控訴人伊藤安里子の所有権持分を一〇〇〇〇分の二三三九とする平成五年七月二九日遺留分減殺を原因とする各所有権移転登記手続をせよ。
3 控訴人高橋幸男は、
(一) 被控訴人らに対し、同目録一(一)ないし(二八)記載の各土地について、被控訴人高橋和子が一〇〇〇〇分の二三八三、被控訴人伊藤安里子が一〇〇〇〇分の二三三九ずつの各所有権持分を有することを確認する。
(二) 被控訴人らに対し、同目録一(六)ないし(三〇)、(三二)、(三三)、(三六)、(三八)、(三九)、(四一)、(四二)記載の各土地ないし建物について、被控訴人高橋和子の所有権持分を一〇〇〇〇分の二三八三、被控訴人伊藤安里子の所有権持分一〇〇〇〇分の二三三九とする平成五年七月二六日遺留分減殺を原因とする各所有権移転登記手続をせよ。
(三) 被控訴人らに対し、同目録一(三四)記載の土地の所有権持分について、被控訴人高橋和子の所有権持分を一〇〇〇〇分の九九、被控訴人伊藤安里子の所有権持分を一〇〇〇〇分の九七とする平成五年七月二六日遺留分減殺を原因とする各所有権持分移転登記手続をせよ。
(四) 被控訴人高橋和子に対し、金一一八九万九七九六円、被控訴人伊藤安里子に対し、金一一六八万〇〇七七円を支払え。
(五) 被控訴人らに対し、同目録二(二)ないし(四)記載の各預金債権、同目録四(一)ないし(六)記載の各出資金、同目録五(一)、(二)記載の各株式について、被控訴人高橋和子が一〇〇〇〇分の二三八三、被控訴人伊藤安里子が一〇〇〇〇分の二三三九の各持分権を有することを確認する。
(六) 被控訴人伊藤安里子に対し、同被控訴人が同目録六記載の不当利得債権について一〇〇〇〇分の二三三九の持分権を有することを確認する。
4 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 控訴人高橋佳久(二七五号事件)
1 原判決中同控訴人敗訴の部分を取り消す。
2 被控訴人らの同控訴人に対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
第二 事案の概要
本件事案の概要は、次の一、二のとおり加除訂正するほか、原判決事実及び理由の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決九頁一行目の「財産権」の次に「(ただし、同目録二の預金の(四)の『七七万四三四〇円』の次に行を改め『(五) その他 四九万五六〇〇円』を加える。)」を、同一〇頁七行目の「原因とする」の次に「各」をそれぞれ加え、同一一頁六行目の「同目録」を「別紙遺産目録」と訂正し、同八行目の「(但し」から同一〇行目の「六二〇〇円)」までを削除し、同一二頁三行目の「一〇億九五六〇万九四九四円」を「一一億八〇七八万〇九九八円」と訂正し、同四行目の「五四五七円」の次に「(原告らが受領した生命保険金二一二五万五四五六円から非課税分九九九万九九九九円を控除した金額)」を加え、同六行目の「公正証書遺言」から同八行目の「が、」までを「庄司が」と、同行目の「第五八七号」を「第五七八号」とそれぞれ訂正し、同九行目の「提起し」の次に「、被告幸男が、庄司の死亡により、前記公正証書遺言に基づき、右各訴訟の目的たる庄司の権利の遺贈を受けて訴訟承継をし」を加え、同一三頁三行目の「返戻」を「払戻」と訂正する。
二 原判決一七頁四行目と五行目との間に次のとおり挿入する。
「(被告山下、同幸男)
仮に、第一生命の保険金の受取人が被控訴人らであり、生命保険金が相続財産を構成しない被控訴人らの固有の権利であるとしても、遺留分の算定においては、民法一〇四四条により、同法九〇三条、九〇四条が準用されるから、生命保険金は、相続分算定上も、遺留分算定上も、特別受益として、その算定の基礎に含まれなければならない。」
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所は、当審における控訴人山下八重子及び同高橋幸男の主張を加えて、本件全資料を検討した結果、被控訴人らの請求は、主文第二ないし第四項の限度で理由があるから認容すべきであり、その余は理由がないから棄却すべきものと判断する。
その理由は、次の1ないし4のとおり加除訂正するほか、原判決事実及び理由の「第三 判断」に説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一九頁一〇、一一行目の「原告和子に対する提訴は庄司の死後であるが、」を削除し、同二〇頁五行目の「被告らは、」の次に「第一生命の保険金の受取人は『相続人』であるが、この場合の相続人は被相続人の財産の承継人である旨主張し、また、」を、同八行目の「から、」の次に「特別受益として、」をそれぞれ加える。
2 原判決二〇頁一〇行目から同二一頁一行目まで全部を次のとおり訂正する。
「しかし、仮に右保険契約の保険金受取人が『相続人』と指定されていたとしても、生命保険契約において、被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に『相続人』と指定されたときは、特段の事情のない限り、右契約は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として指定したいわゆる『他人のための保険契約』と解するのが相当であるところ、本件において、これと別異に解すべき特段の事情は見いだしがたい。
また、右保険契約は、庄司が、『相続人』すなわち原告らを受取人として指定した『第三者のためにする契約』であるから、原告らは、庄司の死亡により、右契約に基づく保険金請求権を固有の権利として原始的に取得したものであり、右保険契約の締結は、文理上、民法一〇四四条が準用する同法九〇三条所定の遺贈又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与に該当せず、かつ、その保険金受取人に指定された原告らが、相続に関わりなく、保険金請求権を取得することが、庄司の契約意思に合致するものと解される(庄司が右契約後、この保険金請求権を原告ら以外の者に取得させたいとの意思を有したとすれば、その旨の別段の意思表示をした上、保険金受取人をその者に変更する手続をすれば事足りたはずであるが、庄司は、このような手続をしていないし、また、右契約の解約手続もしていない。)から、原告らが受け取った右保険金は、特別受益財産にも当たらないものと解するのが相当である。」
3 原判決二二頁七行目の「第一一号証の一、二号証」を「第一一号証の一、二」と、同二四頁五行目の「一一億四六三九万一八三一円」を「一一億八〇七八万〇九九八円(相続開始時の積極財産の総額)」と、同六行目全部を「0.2403(小数点第五位以下切捨て。以下同じ)」と、同九行目の「一一億四六三九万一八三一円」を「一一億八〇七八万〇九九八円(前同)」と、同一〇行目全部を「0.2409」と、同二五頁二行目の「被告佳久は、原告らに対し」を「原告らは」と、同三行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同行目の「二四八一」を「二四〇九」と、同七行目の「三一九」を「三〇九」と、同八行目の「三二〇」を「三一〇」と、同一〇行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同一一行目の「三一九」を「三〇九」と、同二六頁一行目の「二四八一」を「二四〇九」と、同二行目の「三二〇」を「三一〇」と、同四行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同五行目の「二四八一」を「二四〇九」とそれぞれ訂正し、同六行目の「持分」を削除し、同九行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同行目の「二四八一」を「二四〇九」とそれぞれ訂正する。
4 原判決二七頁二行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同行目の「二四八一」を「二四〇九」と訂正し、同三行目の「持分」を削除し、同六行目の「一〇三」を「九九」と、同七行目の「一〇三」を「一〇〇」と、同一〇行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同一〇、一一行目の「二四八一」を「二四〇九」と、同二八頁一行目の「同五年」を「平成五年」と、同一〇行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同行目の「一二三六万四二〇三円」を「一一九九万九六六八円(円未満切捨て。以下同じ)」と、同二九頁二行目の「二四八一」を「二四〇九」と、同行目の「一二三八万九一七一円」を「一二〇二万九六三〇円」と、同四行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同行目の「二四八一」を「二四〇九」と、同六行目の「二四七六」を「二四〇三」と、同七行目及び同九、一〇行目の各「二四八一」をいずれも「二四〇九」とそれぞれ訂正する。
二 よって、これと一部異なる原判決中控訴人ら敗訴の部分を主文第二ないし第五項のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条二項、六四条ただし書、六五条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官塩崎勤 裁判官橋本和夫 裁判官川勝隆之)